この連載記事は「とことん休むHAA時間」と題して、HAA代表の池田が実際にゆっくりと休んでみて、良かった体験を紹介していきます。
ーーーーー
こんなにいい香りの温泉は初めてだ。
温泉宿を訪れる度、その宿ならではの特別ななにかを感じて、心が動く瞬間がある。今回は、温泉から立ち上る“香り”だ。
温泉で身体を温めながら、ほのかな香りが自然と呼吸を深めてくれる。そんなHAA時間を体験できるのが、今回ご紹介する宮城県・東鳴子温泉の「百年ゆ宿 旅館大沼」(以下、大沼)だ。
東京から新幹線で約2時間。古川駅で陸羽東線に乗り換え、更に45分ほどの電車旅の末、鳴子御殿湯駅に到着。そこから5分ほど歩くと、この地で120年以上の歴史を守り続ける湯治宿「大沼」に到着する。
大地から湧きたつ、温泉の香り
8つの湯殿をもつ「大沼」。わたしが香り立つ温泉を体験したのは、宿の裏山にある離れの貸切露天「母里の湯」だ。送迎のマイクロバスに乗り込み裏山へ向かうと、隠れ家のような母里の湯が見えてくる。
源泉かけ流しの温泉は、美肌の湯と言われている重曹泉。肌のごわつきがすっきりして、すべすべになる。
温泉らしい匂いといえば、草津温泉のような硫黄泉の独特の香りを想起する人が多いだろう。しかし、大沼のお湯の香りはきっとその想像を覆す。
ヒノキやお香にも似たそれは、自然と深呼吸をさそい、リラックスの境地へといざなってくれる。この独特な香りについて、湯守の大沼さんに聞いたところ、「それは地中に植物化石層があるからかもしれないですね」と教えてくれた。
温泉は、50年前に降った雨が地中深くまで到達し、貯水されて、再び地層を介して湧いてくる。この”地層”の部分が地域によって違うので、泉質や香り、色などが変わってくるのだ。
この温泉のテロワールともいえる魅力に気づいてしまうと、各地の温泉を巡りたくなるものだ。
隠れ家で気軽に体験できる、大沼流現代湯治
古くからの湯治文化を守る「大沼」では、大沼流現代湯治と題したプランが組まれている。
例えば、2泊3日のアジールプラン。「聖域」などの意味をもつアジールという言葉は、日常から離れた大沼の空間にぴったりだ。
アーリーチェックインや、一汁五菜のヘルシーな食事、貸切り風呂の利用などがセットになったプランで、性別や年齢を問わず、一人旅で利用する人が多いのだという。
2泊3日の滞在にすることで、より日常から離れた空間に身を置き、心と身体に向き合う時間をつくることが可能となる。
忙しい日常の中で3日間の休みをつくり、湯治体験を求めて多くの人々が足を運ぶ理由は、実際に訪れて体感してほしい。
心も身体も開放して、自分をみつめる湯治旅
日常を手放し、心と身体を開放する。忙しい現代だからこそ、そうした時間や体験の必要性は増す一方だ。
多くの人がそれに気づきながらも、時間がとれないという理由でなし崩しになっているのではないだろうか。
そんなわたしたちの深層心理に、大沼の温泉とおもてなしは、まっすぐ応えてくれる。
たまには、どこかに観光に出かけたりせず、宿の温泉でじっくりデジタルデトックスする時間をつくってみてはどうだろう。
従来の温泉旅行の概念を良い意味で覆す湯治旅。豊かな暮らしを送る第一歩は、ここにあるのかもしれない。
ーーーーー
旅館大沼
所在地:宮城県大崎市鳴子温泉字赤湯34
料金:¥16,280(1名)~
アクセス:東京―(新幹線2時間10分)―古川―(陸羽東線45分)―鳴子御殿湯 徒歩約5分
チェックイン 14:00/チェックアウト 10:00 ※プランにより変動あり
Wi-Fiあり
https://www.ohnuma.co.jp/