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月末のジャーナル「月のお便りエッセイ」では、HAA編集部が1ヶ月を振り返って見つけた"深呼吸の種”をエッセイに込めて、お手紙を出すような気持ちでお届けしています。
「は~」と深呼吸しながら、その封を開けてみてください。
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今朝のことだ。
朝6時。アラームで目覚め、リビングへ。いつものように顔を洗い、歯を磨き、朝食をつくり始める。じきに娘も起きてきた。6時半、できあがった朝食をダイニングテーブルに並べ、ラジオをつける。「先に食べててね」と娘に伝え、私は寝室へ息子を起こしに向かった。その時点でかなり嫌な予感がしていた。5歳の息子は、最近幼稚園の行き渋りが激しく、すこし情緒不安定気味なのだ。さぁ、どうなるか。

カーテンをあけると、彼は眩しそうに目をすぼめ、ころころ転がりながら、ふにゃふにゃと泣き始めた。その泣き声は次第に大きく、激しくなっていく。
こういう時は、声をかけすぎても、かけなさすぎてもいけない。どう振る舞うのが正解なのか、いつも悩んでしまう。普段は泣き止むまで一緒にいるのだけれど、ひとりでいたいのかも、と思い、「ゆっくりでいいからね」と言い残してキッチンへ戻った。
寝室からは、ずっと泣き声が聞こえている。何度か様子を見に行きそうになったが、今日の正解はそうじゃない気がして、ぐっとこらえた。
それから5分。自力で泣き止んだ息子がとことことダイニングにやってきた。
「どうして泣いてたの?」なんて聞くのも野暮なので、ナチュラルにハグをして、彼の朝ごはんを用意する。こうなることを予想して、息子の好物の食パンを買っておいた昨日の自分、ナイス!しかも、普段は買わない、4枚切りの分厚いやつ。
食パンを焼き、切り込みを入れ、バター、いちごジャム、ピーナツクリームを塗り、「今日はスペシャルトーストで~す」と差し出すと、息子は「おいしそう」と少し微笑み、食べ始めた。私は胸をなでおろし、ご機嫌になった彼の姿を写真におさめた。

§
私は、できるだけ機嫌の良い人間でありたいと思って生きている。それが、自分にとっても家族にとっても良いに決まっているからだ。
同じような想いを抱いている人はきっと沢山いるだろう。けれども現実の日常は、どうしようもなくブルーになる瞬間を多く含んでいる。理由は分からないけれどとにかく泣きたかった、今朝の息子のように。
ごくたまに、私もそういう気分になることがある。そんな時、私はとても慌てる。早く元のご機嫌な状態に戻らなきゃと。
けれど、焦れば焦るほど正解は分からなくなる。そもそも、絶対的な正解などどこにもないのだ。結局人は、その時できる精一杯の選択しかできず、それが正解だったかどうかは、後になってみないと分からない。そう頭で理解していても、渦中ではもがくしかないのだ。
食事が終わった息子は登園の準備を整えているが、胸元にバッチがうまくつけられなくて、また泣きそうになっている。その姿を眺めながら、いつでも健やかであることは、本当に難しいものだなと思った。
§
なんとか無事に息子を幼稚園に送り届け、私はいったん帰宅した。いつものように掃除機をかけ、洗濯物を干し、仕事中に飲むための珈琲を淹れる。

そうだ、今日はスーパーで買った自分用の珈琲ではなく、好きなカフェで調達した来客用の珈琲豆で淹れてみよう。少し疲れたし、特別にビスケットとチョコレートもつけちゃおう。
息子が今朝、トーストを食べた席に座り、珈琲をひと口。追ってチョコレートをパクリ。口の中でゆっくり溶けていくほろ苦いチョコレートを味わいながら、今頃息子は何をして遊んでいるのかなと思いを馳せた。
ほんの3分くらいだったけれど、ゆっくり珈琲を飲んだ時間は、想像以上に私の頭をスッキリさせてくれた。
うっかり飲み干してしまったので、2杯目の珈琲を淹れ、パソコンの前に腰かける。その頃には不思議と、私の頭はスッキリしていた。
§
日々は、単調なようで、毎日違う。
すっきり晴れた青空のような日もあれば、チクリと刺さった棘がなかなか抜けない日もある。
前者だけではつまらないし、後者だけではしんどすぎる。
壁にぶつかって、乗り越えて、また泣いて。
そんな毎日の中で、「は~」っと力が抜けた一瞬の心地よさを糧に、まだ見ぬ明日を生きていくのだ。
text by 佐藤ちえみ
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色々なことがある日々。1日とて同じ日はないからこそ、心に余白を持つ術を少しでも多く持っていられると、心強いものです。
でもそれは、時に簡単で、時にものすごく難しくなってしまうもの。だからこそ、自問自答しながら頑張って生きる一人一人のすぐそばに、HAAはそっと寄り添いたいと改めて思うのでした。皆さんは、どんな1ヶ月でしたか?来月も、は~っと深呼吸していきましょう。
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