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「月のお便りエッセイ」では、HAA編集部が1ヶ月を振り返って見つけた"深呼吸の種”をエッセイに込めて、お手紙を出すような気持ちでお届けしています。
今月はイレギュラーですが月半ばの公開です。
「は~」と深呼吸しながら、その封を開けてみてください。
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「お母さん、ここ!シワシワなっとるよ」
そう言って息子は、わたしの目と目の間を指さす。
眉間のシワだ。
考え事をしているとき、何気なくスマホを見ているとき
知らず知らずのうちに、わたしの眉間にはシワが寄っているらしい。
「またシワシワなってた?」と言いながら、指でこすって消す素振りをして「これでなくなった?」と聞いてみる。
「オッケー!……お母さん、おばあちゃんにならないでね」
「それは結構難しいけど(笑)、お母さん頑張るわ」
§
おなじ頃、図書館で『いいね!』という児童書を借りた。
さまざまな物事について「いいね」という視点で書かれていて、大人も子どもも楽しめる一冊だ。
ヒーローっていいね
ひざ小僧っていいね
鼻の穴っていいね
眠れないっていいね
その中に、「エクボっていいね」というお話があった。
「お母さん、エクボってなに?」と息子が聞く。
「笑った時に、口の横にできるくぼみのことだよ」
「お母さん、笑ってみて」
「にこにこ〜」
「あ、できてるよ。お母さんのエクボ、いいね」
§
先日、わたしは35歳になった。
息子の望みに反して、着実に歳を重ね、少しずつおばあちゃんに近づいている。
これから顔のシワは増えていく一方だろうし、それに抗うつもりはないけれど、
同じシワなら眉間より、エクボがくっきり出るような歳の重ね方をしたいと思う。
息子の顔を見ると、当然シワのシの字もないほどつるっときれいで。
眉間のシワなんて無縁だよな~と思いながら、その頬にうっすらエクボができていることに気づく。
すぐに消えてしまいそうな、まだ若いエクボ。
これから、ググッと濃くなってほしいと願わずにはいられない、希望に満ちたエクボ。
同じシワなら、眉間よりエクボがいいね。
わたしも、キミも。
そんなことを考えながら、今日もいつもと変わらない、けれどちょっとだけ特別な我が家の1日が始まる。
text by 佐藤ちえみ
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今回は、シワとエクボのお話でした。
自分でも気づかないうちに濃くなっていく眉間のシワ。
深呼吸で目の間の力みを手放して、代わりにエクボができるような毎日を送りたいものです。
年度末に向けて忙しい日々が続きますが、ふと笑える瞬間を大切にしながら、今月も駆け抜けましょう。
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