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月末のジャーナル「月のお便りエッセイ」では、HAA編集部が1ヶ月を振り返って見つけた"深呼吸の種”を、お手紙のように綴りお届けしています。
「は~」と深呼吸しながら、その封を開けてみてください。
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真夏のような日差しが照りつける9月某日。
スーパーへ買い出しに向かうべく、愛車(ママチャリ)のキッズチェアに息子を乗せた。
すると、珍しく息子が「じぶんの自転車でいきたい」と言う。
スーパーまでは、大人が漕いでも片道15分。
加えて帰りは上り坂。35度の酷暑の中、4歳児が自力で完走するには、現実的にも、わたしの見守りメンタル的にもハードルが高かった。
そんなことをぐるりと頭の中で考えてから、
「暑いし、今日は無理やな~」と答え、いつも通りの二人乗りスタイルで出発した。
収穫を待つ田んぼ横の坂道を、自転車は風を切って下っていく。
キッズチェア越しに息子が話しかけてきた。
「お母さん、ふわふわことばと、ちくちくことばって知ってる?」
「初めて聞いた!どんな言葉なの?」
息子によると、ありがとう、大丈夫だよ、てつだうよ!など、言われて嬉しい気持ちになるのが「ふわふわことば」。
そんなのダメ!、早く、気をつけてよ!、など、言われて悲しい気持ちになるのが「ちくちくことば」らしい。
息子は続ける。
「自転車の話、"無理"っていわれて、ちょっと悲しかった。だから、ふわふわことばで伝えてほしいな」
「え!そうだったの?ごめんね。なんて言ったら良かったかな?」
「涼しくなったらいいよ、とか、また今度いこうね、とか、そんなかんじ?」
「なるほどね、分かった!教えてくれてありがとう。秋になったら自分の自転車でお出かけしよう、約束ね」
「うん!」
§
ポジティブシンキングとか、何事も前向きに!というメッセージは少し重荷になるわたしにとって、「ふわふわ」と「ちくちく」はとても分かりやすく、暮らしに取り入れやすい深呼吸の種だった。
家族と話すときも、仕事中の会話も、自分自身との対話すらも
「ふわふわ」なのか「ちくちく」なのか頭の隅で考えるだけで、出てくる言葉も、その場の空気も大きく変わる。
できるだけ優しく、できるだけ丁寧に、言葉を手渡す。
それは、子どもも大人も変わらない、"ちょっといい当たり前"の話。
でも同時に、難しい話でもあるんだよな~とも思う。
"ちょっといい当たり前"が "当たり前"になったとき
わたしは今よりちょっとだけ「深呼吸できる人」になれるかもしれない。
10月になれば、今よりぐっと秋めくだろう。
「あと何日で涼しくなるかな~」と指折り数える息子を見ながら、約束を果たしてあげられる日を楽しみに待っている。
執筆:佐藤ちえみ
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今回は、「ことば」をヒントにした深呼吸の種をお届けしました。
誰かに投げかけることばはもちろん、自分自身との対話でも気にかけると、自然と呼吸が深まるかもしれません。
さて、10月は気候的にも過ごしやすく、3連休もあるので、楽しいイベントを企画している方も多いのではないでしょうか。
今月もお疲れさまでした。来月も「は~」と深呼吸していきましょう。
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