心身ともに余白のあるライフスタイルが送れるように、様々な情報をお届けしているHAAのジャーナル。
この度、新企画「休み方のプロにきくHAA時間」のインタビュー連載がはじまります。
この連載では、様々な分野の「休み方のプロ」の方にインタビューし、その方の休息にまつわる物語をお届けします。皆さんが休息について考えるきっかけになれば嬉しいです。
第1回目にご登場いただくのは、「休息デザイン研究所」の発起人である川人ゆかり(かわひと・ゆかり)さんと、理学療法士の山野宏章(やまの・ひろあき)さんです。
2018年から構想を練り、2020年頃から本格的に活動をはじめた休息デザイン研究所。勉強会やリトリートのモニターツアーを主催するなどして活動の幅を広げながら、山野さんをはじめとする専門家も仲間に加わり、さまざまな視点から休息について考え発信しています。
休息について考えるコミュニティラボ「休息デザイン研究所」
--休息デザイン研究所をはじめたきっかけはなんですか?
川人さん「10年以上、組織やキャリアといった領域で仕事をしてきて、疲弊していく人や組織をたくさん見てきました。そんな中で、『いきいきと働くためには、しっかり休むことも大切』という、ある種当たり前のことを、もっと考えるべきではないかと感じました。『働き方』については世の中で沢山議論されているし、ノウハウや学びの機会も多いです。でも、『休み方』についての議論や研究はほとんどないことに気づきました」
「『人がいきいきと働いていくための休み方ってなんだろう?』と分解して考える、コミティラボのようなものがつくりたいと思い、休息デザイン研究所の活動を始めました。また、一方的に私たちから情報を発信するのではなくて、みんなで関わり合いながら健康についての知識を高め、休み上手になっていける場を目指しています」
休み方について考える中で、医療職や専門職の方の見解を交え、多角的に考えを深めていきたいという思いから、2020年から理学療法士の山野さんが活動に加わりました。
山野さん「長い間、理学療法士として病院で働き、さまざまな患者さん・病気と向き合ってきました。現在は大学教員として痛みや疲労と自律神経の関係についての研究と理学療法士の養成を主に仕事をしています。元々野球などのスポーツ障害予防の研究を行っていたので、休息の重要性は感じていました。そこで、労働者に目を向けて調べてみたところ働き方についての研究はたくさんあるのに、休息や、それに深く関わる自律神経などの研究については、まだまだ少ないなと感じました。人生100年といわれていることもあり、できる限り長くいきいきと働き、自分らしく生活し続けるためには、働き方と同じくらい休み方も大切です。そんな時にゆかりさんと出会い、考えに共感したこと、まずは実際に働き人たちがどのように休息を捉えているのかを知りたいと思ったことから休息デザイン研究所の活動に参加することにしました」
今の時代をどう生きる?多様性からみる、休息のデザインの仕方
--働き方や休み方は、時代の変化によって少しずつ変わっているように感じます。今と昔で何が変わったのでしょう。
山野さん「昔は、ひとつの会社でキャリアアップし、定年まで勤めあげるのがスタンダードでした。良し悪しはさておき、それしか選択肢が無いので、疑う余地もなかったように思うんです。
情報社会となった今は、SNSなどを通して、いろんな生活スタイルや働き方がみえますよね。それと自分の状況を比較して、羨ましがる人もいれば、働き方に疑問を持つ人も増えている印象です。そこから、ライフスタイルを考えなおす流れが生まれているように感じます」
「すこし立ち止まって、自分がどうしたいか考える人が増えている。必ずしも仕事第一でなくてもいいのかな?もっと自分にあった働き方はないのかな?という疑問が、ポジティブにもてるようになれば良いと思います。自分の状況を認識して、違うものを取り入れて、その結果自分はどうなるのか。モニタリングをするぐらいの余裕の中で生活するのが、一番変化に順応できるのではないでしょうか。その中で、休み方についても検証を重ねることで、自分にとってちょうどいいライフスタイルが確立していくのだと思います」
大切なのは、今の自分の状態を深く理解すること
--自分に適した休息方法をみつけるために、大切なことはなんだと思いますか?
川人さん「まずは自分の状態を注意深く観察し理解することです。疲れているのは心なのか、身体なのか。その原因は何なのか。それが分からないと、例えばただやみくもにヨガをしても、今の疲れに対し休息として適しているかは分かりません。まずは自分の状態を知り、問題を解決するための休息方法を探ってみることが大切ではないかと考えています」
--自分の状態を知るために、具体的にどんな方法がありますか?
川人さん「自分は普段どうやって休息をとっているのか、一度棚卸をしてみるのがおすすめです。書き出していくと、休息の仕方の上手・下手や、向き不向きなどの傾向がみえてきます。それから、今の自分にふさわしい休息方法を具体的に検討します。例えば、毎日するならどんなことなのか。月1回ならできるリフレッシュ法は何があるのか。1年で考えたら、例えば年に2回は旅行するとか、そこで何するのか、など。こうした『休息のレシピづくり』のワークショップは、開催する度にご好評いただいています」
--確かに、働き方やキャリアについての棚卸はしていても、休み方についての棚卸はしたことはないですね。
川人さん「また、ひとりではなく人を巻き込んで休み方について考えるのもおすすめです。家族や夫婦で、休み方について対話してみると新たな発見がありますよ。休息方法のバリエーションを一人で増やしていくのは結構難しいので、対話した相手の休息方法を試し、自分に合いそうながら取り入れていくのも一つだと思います。休息デザイン研究所でもインタラクティブな関わりを大切にしていて、参加者同士で意見交換したり、発表したりすることで、新たな気づき・発見が生まれているのを感じています」
(淡路島でのワーケーション中に休み方について語り合っている様子)
--確かに、身近な人の意見を聞いたり、自分とは違う休息方法を聞くことは、良い刺激になりそうです。
川人さん「あとは、皆さん忙しいと思うのですが、休む時間を作るのであれば、その分何かの時間を捨てる覚悟も必要です。1日5分ヨガをしたいのであれば、なんとなく携帯を触っている5分を短縮するなど。そうすることで、たとえ短時間からでも休息を取り入れやすくなる思います」
--人それぞれ適した休み方がある中で、意識すべきポイントはありますか?
山野さん「何も考えないぼーっとしてる時間をつくることを意識すると良いと思います。脳のデフォルトモードネットワークというものが関係しているのですが、本人はただぼーっとしている感覚でも、頭の中では神経が繋がり、物事がどんどん整理されていくんです。日常の中で、こうした余白の時間をつくれると、頭がスッキリして新たなアイデアが生まれるかもしれません。ただ一日中ぼーっと過ごして考え事をしすぎると逆に脳が疲れてしまいます。休息は行動を断ち切るものと考えて、仕事やプライベートの間にこまめに取るのが重要です。動き続ける、休み続けるといった同じ行動をとり続けないようにするというのが大事ですね」
また、何事も惰性でやらないことが大切という山野さん。
山野さん「何かをするとき、意識せずとも先入観から行動決定していることがあります。例えば慰安旅行は、夜絶対どんちゃん騒ぎものだ、みたいな(笑)。あとは有給をとっても、実際は家で無意識に仕事してしまってるとか。仕事の一区切りがついたら必ずチョコを食べてしまってるみたいなことないですか?こうした思い込みや習慣は各々あると思いますが、それらが本来の自分の考えややりたいことと乖離しているいないか。本当に自分はそれを望んでいるのか?と一度立ち止まって考えてみるのも、自分らしいライフスタイルを探すきっかけになると思います」
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今回は、休息デザイン研究所のおふたりにお話を伺いました。まずは自分自身の状態を見つめることが、良い休息方法や、理想のライフスタイルを見つけるための第一歩になるのかもしれません。
皆さんも、少し立ち止まって休息について考えを深めてみませんか?
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