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月末のジャーナル「月のお便りエッセイ」では、HAA編集部が1ヶ月を振り返って見つけた"深呼吸の種”を、お手紙のように綴りお届けしています。
「は~」と深呼吸しながら、その封を開けてみてください。
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「最近な、歌つくってんねん」
午後3時、おやつのお饅頭を頬張りながら、小学1年生の娘が言う。
「まず、タイトルを考えて、歌詞を考えて、メロディー考えて、振付考えて、やっと1曲できたところやねん。頭の中にあるんやけど、ちょ……書くわ!」
そう言って、食べかけのお饅頭を皿に置き、自由帳を開いて夢中で歌詞を書き始めた。
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タイトルは、「大きな夢へ飛び出そう」。希望と不安を持ちながらも、夢に向かって一歩踏み出してみようという、エールを送るような歌だった。
「素敵だね!お母さんはこの部分が好きやわ~」と言うと、娘はつらつらとその制作過程を話し始めた。
何回も消しゴムで消して、書き直したフレーズ、歌詞に込めた想い、お気に入りのメロディーなど、沢山の努力がこの曲に詰まっているのだと。
ふむふむ、なるほどねと話を聞きながら、私はこう返した。
「例えばこのお饅頭も、誰かが沢山考えて、挑戦して失敗して工夫して、やっと完成した"とっておき"のお饅頭なのかもしれないね」。
すると彼女の目と鼻の穴が、ぶわっと膨らんだ。
「てことは、例えば……この本も、お気に入りの洋服も、ポケモンカードも、誰かがつくった“とっておき”なのかな。それって……、世の中楽しいことでいっぱいってことやん!」
そう言って、目をキラキラさせて笑った。
§
それからしばらく、我が家では“とっておき”ブームになった。
友達とつくった紙ヒコーキ。河原で拾った石。
寝る前のハグ。吟味に吟味を重ねて選んだ駄菓子。
そのどれもが、“とっておき”という言葉をつけるだけで、いつも以上に特別に感じられる。
それは決して、子どもだけの話ではなくて……。
そばにいてくれる人の存在。
ようやく見つけた、お気に入りの珈琲豆。
街の景色や、馴染みの店での会話。
そういう、日常に馴染んだ“とっておき”を思い出したとき
人の呼吸は深まり、日々は輝きを取り戻すのだと思う。
私にとっては、そんな気づきをくれた娘の創作活動と、たわいもないお喋りこそ
日常の大切さに気づかせてくれる、“とっておき”の深呼吸の種になった。
執筆:佐藤ちえみ
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今回は、“とっておき”にまつわるお話でした。
日々を過ごしていると、自分の暮らしを取り巻くアレコレの特別感は、時に薄れがちです。
でも、よくよく考えると、いつも聴いている音楽も、読みかけの本も、ぼ~っと飛行機雲を眺める時間も、自分にとって“とっておき”なHAA時間なのかもしれません。
その感覚を確かめながら、残り少ない2024年を締めくくれたら良いなと思います。
今月もお疲れさまでした。来月も「は~」と深呼吸していきましょう。
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