ジャーナル

【新連載│気になるあの人の、深呼吸のみなもと】第一回ゲスト:真野 遥さん~「心地よさ」に素直に従い、余白を醸す豊かな暮らし~

【新連載│気になるあの人の、深呼吸のみなもと】第一回ゲスト:真野 遥さん~「心地よさ」に素直に従い、余白を醸す豊かな暮らし~

深呼吸はどこからきて、どこへゆくのだろう。
自分なりの深呼吸のみなもとが見つかると、暮らしはぐっと軽やかに、豊かになっていくはず。そんな想いから、新連載【気になるあの人の、深呼吸のみなもと】は生まれました。

 

第一回のゲストは、京都にある酒屋「発酵室 よはく」の店主であり、料理家の真野 遥(まの・はるか)さんです。

プロフィール
発酵室 よはく店主・料理家
日本酒と発酵食を愛する料理家として、オリジナルレシピの考案や、書籍『手軽においしく発酵食のレシピ』(成美堂出版)、『いつものお酒を100倍おいしくする最強おつまみ事典』(西東社)などを出版する。2022年より「発酵室 よはく」を屋号とし、発酵を通じて暮らしに余白をつくる活動をスタート。2023年6月には、京都市左京区にて酒屋「発酵室 よはく」をオープンした。

発酵室 よはく

「発酵室 よはく」があるのは京都市左京区。叡山電鉄の元田中駅で下車し3分ほど歩くと、暖簾がかかった町家が見えてきます。

店内には真野さんがセレクトした日本酒がずらり。購入はもちろん、店内で有料試飲(角打ち)が可能です。カウンターでお酒とおつまみのペアリングを楽しんだり、居合わせたお客さん同士で会話したり、本を読んだり。店名通り、余白が生まれる場所として愛されています。

活動テーマ「暮らしに余白を醸そう」に込めた想い

はじめに、真野さんがモット―としている「暮らしに余白を醸そう」という言葉が生まれた経緯や、価値観についてお話を伺いました。

真野さん:
「今の時代、効率化やスピード感がとても重視されていると感じます。料理家としてレシピを提案するお仕事でも、“時短・簡単”を求められることが多いんですよね。それだけみんな忙しいということだと思うんですが……なんだかモヤモヤがぬぐえなくて。

そもそも私が愛してやまない発酵料理や日本酒は、時間をかけて熟成させてこそ旨味や風味が醸し出されるものです。その素晴らしさを知っているからこそ、時短やコスパばかり優先される時代の価値観にずっと違和感がありました」

違和感の根っこを探すため、SNS上で意見交換したり、本を読んでインプットをしたりと、あらゆる方法で思考を深めたという真野さん。その末に辿り着いたのが、余白という言葉でした。

真野さん:
「お世話になっているデザイナーの水迫涼汰さんと話していた時に、ふと"余白"という言葉が出てきたんです。その瞬間に全て腑に落ちた気がしました。この息苦しさの原因は、余白がなくなっていく感覚からではないかと。そこから、"暮らしに余白を醸そう"をモットーに活動を始めたんです」

お金でなんでも買える時代に、そうではない価値観に目を向ける

活動テーマが定まったことで、より暮らしに寄り添った余白の提案をするようになったという真野さん。Podcast番組「よはく採集」の発信や、季節の手仕事会もそのひとつです。これらの活動の背景には、現代社会で排除されがちな価値観に目を向けたいという想いもあるのだとか。
真野さん:
「たとえば梅仕事だったら、梅のホシを一粒一粒をとるのにも、完成するまでにも時間がかかりますよね。
そんなのわざわざしなくても、買えばいいじゃんって、そういう考え方もあると思います。でも、無になって黙々と作業したり、誰かと一緒に喋りながら楽しんだり、そういう時間を“無駄”の一言で切り捨てるのは勿体ないなって……。そこにはお金では買えない価値があると思うから、そういう“排除されゆくもの”を残しておける手がかりとして、余白をテーマにしたわたしの活動が活きたらいいなと思います」

(店内の本棚には、余白をテーマにする上でとても参考になったという本『手作りのアジール』(青木真平 著)をはじめ、真野さんセレクトの“よはく本”が並ぶ)

五感で感じる、深呼吸のいろいろ

HAAは「日常に、深呼吸を届ける」をミッションに掲げています。真野さんにとって、深呼吸とはどんなものなのでしょうか。

真野さん:
「深呼吸って、意識して空気吸って吐き出す、というものだけではないと思うんです。例えば、美味しいものを食べたとき、料理しているとき、お酒を呑んだとき。『は~』っと思わず漏れ出るものも、深呼吸なのかなって」

「好きな場所に行ったときにも、呼吸が深まりますね。わたしは2020年に東京から京都に移住したのですが、鴨川に行くといつも深呼吸できるなと感じています。
ゆるやかな川の流れと、だだっ広い空。
黄昏れている人や、楽器の練習をする人、走る人、昼寝する人など、みなさん自由な感じがすごく良いなぁって。
都会に住んでいた時は、場所やモノ全てに“役割”があって、それがないとダメみたいな窮屈さを感じていました。その点京都には、鴨川のような“役割のない共有地”が多いように思えて、それが自分に合っているんだと思います」


「お風呂も呼吸が深まる時間のひとつですね。冬は酒粕を入れたり、夏はミントを入れたり。ドライにしたセイタカアワダチソウを入れて野草風呂を楽しむこともあります。ぼ〜っとしたり、動画を見たり、1時間ほど長風呂するのが好きです」

真野さんの深呼吸のみなもとは?

真野さん:
「自分の感覚を大切にすることです。周囲からの視線や、社会的価値観から少し離れて。自分が素直に心地よいと思える感覚が、深呼吸や余白に繋がるんじゃないかなと思います」
「なんでも数値化し、すき間を埋めようとする世の中で、心地よさや余白といった数値化できない領域を残しておきたい。そんな曖昧で大切なものを取り戻すための場所になれたら嬉しいです」


取材後記

日々忙しく、スピード感や答え(正解)が求められるこの時代に
「時間がかかっても、曖昧であっても良いと思う」という真野さんの言葉は
張り詰めた心に風穴をあけ、深呼吸を運んでくれるようでした。
周りの目を気にせず、自分なりの心地よさを頼りに、暮らし方・働き方を探していく。
そうして手にした日常は、誰にも奪われない、自分だけの宝物になるはずです。

最後までお読みいただきありがとうございました。
次回はどなたが登場するのでしょうか。ぜひお楽しみに。

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【発酵室よはく】
所在地:京都府京都市左京区田中里ノ前町56
instagram:発酵室よはく▶https://www.instagram.com/yohaku_hakko/
      真野遥さん▶https://www.instagram.com/harukamano85/

HAA編集部
HAA編集部
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