ジャーナル「わたしたちの日々」では、公募でご投稿いただいたエッセイの中から、毎月1本をご紹介しています。誰かの暮らしのささやかな一コマに想いを馳せながら、「は〜」っと深呼吸してみませんか?
「うわ、これ絶対に落ちないやつだ……」
先日、いただいた立派な干物を網焼きにした。
香ばしい匂いとふっくらした身に大満足したまではよかったのだが、残されたのは、真っ黒に焦げついた焼き網だった。

私は、何事にもすぐに結果を求めがちな性格だ。
掃除も課題も仕事も、ちゃっちゃと片付けてスッキリさせたい。
しかし、スポンジでいくら擦っても焦げはびくともしない。
効率重視で愛用している使い捨てスポンジでゴシゴシする気力も湧かなかった。
「まあ、とりあえず」と投げ出すように食洗機の隅へ突っ込んだ。
入れたところで綺麗にならないだろう、とあきらめつつも。
当然、一度や二度の洗浄で落ちるはずもない。
いつもならあきらめて手で洗うか捨てるの二択だが、食後の私は力尽きていて、網を食洗機の中へ入れっぱなしにした。

日々の食器洗いのたびに、洗剤と温水のシャワーを浴び続ける網。
「まだ入ってるな」と半ば呆れながら放置し続けていた。
それから季節がひとつ変わる頃、乾燥が終わった食器を取り出していた家族が、網を掲げて言った。
「これ、いつの間にかめっちゃ綺麗になってるやん」
驚いて覗き込むと、頑固だった真っ黒な焦げが綺麗に剥がれ落ち、シルバーの網目がぴかぴかと輝いていた。
「毎日続ければ、綺麗になるんやな」
背後からぽつりと聞こえた家族の言葉が、胸の奥にすっと染み込んでいった。

すぐに答えや結果を出そうと焦らなくてもいい。
最初は「無理だろう」と思っていても、毎日少しずつ、淡々と続けていれば、いつの間にか形になる。網の焦げが時間をかけて剥がれ落ちたように、私の積み重ねも、いつか私自身を助けてくれるのかもしれない。
知らず知らずのうちに入っていた肩の力を抜き、そっと深呼吸をした。
ねね / フリーランス
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