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【深呼吸のはなしをしよう】「深呼吸は、自分自身に還る時間」#04 土門蘭

【深呼吸のはなしをしよう】「深呼吸は、自分自身に還る時間」#04 土門蘭

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忙しい日々の中でも、健やかに生きていきたい。
そのためには、どうしたらいいのだろう?
そんな問いから、連載企画「深呼吸のはなしをしよう」は生まれました。

心に余白を生み出す行為や状態を「深呼吸」という言葉で表現し、対話を通して、その人なりの深呼吸スタイルを探っていきます。
みなさんも一緒に深呼吸について考えてみませんか?
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みなさんこんにちは、HAA編集部の佐藤です。
今回の「深呼吸のはなしをしよう」のゲストは、文筆家の土門蘭(どもん・らん)さんです。

土門さんとお話ししてみたいと強く思ったのは、土門さんの著書『死ぬまで生きる日記』の中に「休むことが怖い」という言葉を見つけたことがきっかけでした。
その後、土門さんの発信を追いかけていると「最近ひとりカラオケに行ってみました」「毎日鴨川を歩くようになりました」など、日常的に深呼吸されている様子が垣間見えることに気づきました。

今、深呼吸ができずに困っている人のなかには、土門さんと同じように「休むことが怖い」と感じている人がいるかもしれない。そして、自分なりの深呼吸を取り入れはじめた土門さんにお話を聞くことは、きっとその人たちの希望になると思ったのです。

今回は、土門さんのHAA SPOT(深呼吸できる場所)である京都の複合施設「Com-ion」にてお話を伺いました。読者のみなさんも、同じ空間で車座になって座り、お喋りしているような感覚でお読みいただけると嬉しいです。

ずっと休むのが苦手です

佐藤:
今日は「深呼吸」というテーマでお話をしたいと思っています。土門さんは「深呼吸」や「休む」ということについて、どんなイメージをお持ちですか?

土門さん:
私はずっと休むのが苦手です。放っておくと仕事ばかりする人間なんですよ。やらなきゃいけないことをガツガツやってしまうので、自分がしたいこととか、心ときめくことに目を向ける余裕がなくなりやすいタイプだと思っています。

土門さん:
一方で、人生を楽しむためには心の余白や深呼吸する時間が必要だろうなってことも分かってるんです。そうしたいのにできないジレンマをずっと抱えて過ごしてきました。それで、普段カウンセリングを受けているカウンセラーさんに相談してみたんです。

佐藤:
カウンセリングはいつ頃から受けていらっしゃるんですか?

土門さん:
2020年の春ごろからです。子どもの頃から、漠然と「死にたい」と感じることがあって、その気持ちに向き合うために継続的にオンラインカウンセリングを受けています。
(※気になる方は土門さんの著書『死ぬまで生きる日記』を読んでみてください。)

佐藤:
カウンセラーさんはなんと?

土門さん:
子どもの頃好きだったことをやってみてください、と。あとは、仕事や育児と関係ない場所にひとりで行ってみてくださいとも言われました。
そこでパッと思いついたのが本屋さんや映画館だったんですけど、どうしても仕事と繋がってしまうな〜と思って。それで、考えた末に、そういえばずっと気になっていたお店があったことを思い出して、行ってみることにしたんです。

佐藤:
どうでしたか?

土門さん:
自転車で向かいながら、「全く仕事に関係ない場所に行くのは本当に久しぶりだな〜」と思って。そこに行ったことを文章にする必要もない。ただ素直に、自分が行きたいと思った場所にこれから行くのだと思うと、どんな場所なんだろう?ってワクワクして、すごく気持ちが軽くなってきて。そういうことも深呼吸なのかなって思います。

佐藤:
土門さんのVoicy『書書然然』でもその時のお話をされていましたよね。他にも、ひとりカラオケに行ってみたとか。

土門さん:
そうです。ひとりカラオケで、好きな曲を大声で歌って、身体を自由に動かしたら、結果すごく深呼吸できました。毎週通っているボクシングも、限界まで身体を動かした後に、「は~」って深呼吸できているなって思います。

土門さん:
そうやって色々試しているうちに、私は「はい、深呼吸してください(休んでください)」と言われると困ってしまうけれど、思うがままに動いたり、どこか好きな場所に行ったり、いわば子どものような時間を過ごせると、結果として深呼吸できるタイプだと気づき始めました。大人の役割を取っ払ったときに残る「初期衝動」のようなものに素直に従って行動できたとき、最終的に深呼吸できるのだと思います。

深呼吸できたきっかけは、タスク化とイメージ

佐藤:
カウンセラーさんのアドバイスを受け、実際にやってみて、今ご自身なりの休み方が見えてきたタイミングだと思うのですが、その上で「これは大切だな」と感じたことや、気づきはありましたか?

土門さん:
そうですね。意識改革には限界があるということですかね。
元々、土日も仕事しちゃうし、やるべき家事もたくさんあるし、「休むってなんだろう……」っていうタイプの人間なんです。空白の時間があると「勿体ない」って思っちゃう。染み付いた思考の癖を変えるのって本当に難しくて。だから、「休む」というタスクを入れることで、習慣化できないかと考えました。

佐藤:
なるほど。タスクを入れたくなってしまう気質を逆手にとったんですね。

土門さん:
そうです。最近は、仕事が終わってから毎日鴨川沿いを30分くらい歩くようにしているんです。それも私にとって大切な深呼吸時間なんですけど、当初は「そんな時間ない」「そんな時間があるなら夕飯のおかず一品作っておいた方がいい」と思っちゃってたんです。これが思考の癖ですよね。でも休みたい。だからタスク化してみたら、できたんです。

土門さん:
もうひとつ大切な視点だなと思ったのは、イメージを持つことです。例えば鴨川を散歩するにしても、闇雲にただ歩くとなると、私には難しくて。

佐藤:
それはどうしてですか?

土門さん:
やっぱり考え事しちゃうんですよね。全然頭が休まらない。そんなことを、月に一度通っているフェイシャルサロンの方にポロっと話したら、彼女が私の頭を触りながら「土門さんは、常に考え事をしているから、頭や顔がすごく凝っていますね。頭にのぼった血を、全身に巡らせるイメージで歩いてみてはどうでしょう。そうすれば、きっとよく眠れますよ」って言ってくれて。ハッとしました。
実際にそのイメージで歩いてみたら散歩するのがすごく楽しくなったし、眠りやすくもなりました。

佐藤:
なるほど、イメージって大切なんですね。今のお話を聞きながら、以前土門さんがVoicyで「身体を動かすことはエネルギーを発散させることだ」と仰っていたのを思い出しました。私も毎日歩いているのですが、夏のウォーキングが苦手だったんです。汗かくし、しんどいし、暑いし。でも、その放送を聞いたあと、「エネルギーの発散」というイメージを持ったら、汗をかくことが「気持ちいい」という感覚に変わって。それから夏がくるのが怖くなくなりました。

土門さん:
それは良かったです。「休む」に関しても、眠ったり、ぼーっとしたり、どちらかというとエネルギーを「溜め込む」イメージが強いですが、私の場合、エネルギーを溜め込みすぎると腐るんだなとも思って。頑張って仕事して「疲れた」と感じて、休むために眠ろうとするじゃないですか。でも、頭しか動いていなくて身体に熱が溜まったままだと、眠れないんですよね。それはどうしてだろう?と考えたら、多分熱がこもりすぎていて、ちゃんと発散できていなかったんだなと思って。

佐藤:
頭と同じ分だけ身体も使ってあげないと、バランスが保てなくなる、ということなんでしょうか。

土門さん:
そう思いますね。だから、私の場合、ヨガや瞑想のように、体を休めて、余白をたっぷりとる深呼吸のイメージよりも、ボクシングや筋トレで思いっきり発散するイメージの方が向いているんだと思います。

心の性質と身体の動きを一致させる

佐藤:
今、「余白」という言葉が出てきたので、それについても少しお話ししたいと思います。
私はこの余白をすごく大切にしていて、常に心の3割くらいは余白を持っておきたい人間なんです。
自分のキャパシティが狭い自覚があるので、余白がなくなりそうになったらアラートが鳴って、散歩に行ったり珈琲を淹れたりして意識的に休む時間をとって調整するのですが、土門さんはどんな風に余白と付き合っていますか?

土門さん:
私は逆に、余白が苦手です。陸上で例えると、めちゃめちゃ短距離走タイプなんだと思います。無我夢中でガーっと集中してやって、それが終わった後に、自分の好きなようにできる時間があって、結果余白が生まれるみたいな。それがないと倒れちゃう感じです。佐藤さんが仰った余白3割を残す、というのは、長距離走タイプなのかな?と思いました。

佐藤:
なるほど、陸上の例えは分かりやすいですね。確かに私は、常に自分の余白メーターのペース配分を考えているような気がします。当然、それぞれ合った休み方も違ってくるのでしょうね。

土門さん:
なんか……自分の心の性質と、身体の動き(行動)を一緒にしないといけないんだなって、最近分かってきたんです。私の場合、心がかなりアグレッシブなので、身体を動かさないでいると、すごくアンバランスになるんですよね。

佐藤:
なるほど。

土門さん:
コロナ禍の頃は外出もできず、家に籠って文章と向き合うことばかりしていたので、アンバランスさがとても顕著に出てしまい、すごく不安定でした。その頃からカウンセリングを始めて、身体を動かして発散することを習慣化することを覚えて、少しずつバランスが整っていってる気がして。自分の心がどういうタイプなのかをちゃんと把握して、それに合う行動をすることが大切なんだなと実感しています。

佐藤:
すごく腑に落ちました。これまで沢山の方と深呼吸についてお話をしてきましたが、本当にみんなタイプが違って、休み方も違う。土門さんは、一般的な「休む」のイメージとは違うアプローチかもしれませんが、ボクシングや筋トレがご自身の気質に合っていて、ご自身なりの「休む」に繋がると発見した。一辺倒の休み方をするのではなく、自分なりの休み方が見つけられると良いのかもしれませんね。

深呼吸って、ちょっと怖い

土門さん:
今日お話ししていて、深呼吸するときって、ちょっと怖いなって思いました。なんていうか……世界を受け入れる感じがしませんか?

佐藤:
世界を受け入れる。もう少し詳しく教えてください。

土門さん:
私、常に闘争モードなんです。当然呼吸も浅くなるじゃないですか。そこから「は~」って力を抜く瞬間って、鎧を脱いで裸になるような感覚があって、ちょっと怖いんです。

佐藤:
すごく無防備ですよね。

土門さん:
そう、すごく無防備な素の自分になるんです。ボクシングも、もう無理!ってところまで体を動かして、終わった瞬間って無防備ですよね。ひとりカラオケなんて、絶対誰にも見られたくないくらい無防備だし、今攻められたら終わりだ!みたいな。誰と勝負してんねんって感じですけど(笑)。

佐藤:
はははは(笑)。

土門さん:
深呼吸するって、ある意味で弱い自分や柔らかい素肌をさらけ出している状態だなって思うんです。

佐藤:
確かに、ある種「怖い」とも表現できますね。その怖さも感じつつ、それでも土門さんは深呼吸したいと思っている。それはどうしてだと思いますか?

土門さん:
社会に出るということは、なんらかの役割や責任を背負って、鎧をかぶり、武器を持って、いわば闘っている状態だと思うんです。そこでなんとかやっていくんだと思って頑張るんだけど、それだけやっていると、「あれ?私が本来好きなことってなんだっけ?」とか、やりたかったこと、行きたかった場所が分からなくなってくる。自分がどんどん乾いていく感覚になるんです。

佐藤:
はい。

土門さん:
それに対して、深呼吸は本来の自分に還ることだと思うんです。好きな音楽を聞きながら散歩している時って、小さい頃の自分、本来の土門蘭に戻れてるなって思います。1日に1回でもいいから、ちゃんと本来の自分自身に戻れてこそ、また外で闘える。その両方を行ったり来たりすることが必要なんだなっていうことに、最近気づき始めました。

佐藤:
バランスが大事。

土門さん:
そうですね。最近は力抜いた方が良いよって言われる社会ですけど、力入れなきゃいけない時も絶対にあるじゃないですか。

佐藤:
ありますね。

土門さん:
だから、力を入れることが悪いんじゃなくて、その分力を抜く時間もちゃんと持てているっていう、バランスが大切なのかなって思います。その方法は人それぞれ違うけれど、私は、私なりの方法を習慣として身に着けられはじめているんだなと思っています。

わたしワールドを持ちながら、他者と関わる

佐藤:
今、「社会に出て闘う自分」と「本来の無防備な自分」というお話がありましたが、前者の自分には周りに他者がいる状態で、後者の自分はひとりきりの時なのかなと思って……。
ちょっと話はずれちゃうかもしれませんが、家族といるときの深呼吸について個人的に課題を感じていて。土門さんはどう思いますか?

土門さん:
そうですね。人といるときは、例えそれがどんなに身近な存在だとしても、どうしても社会性を帯びてしまう気がするんです。本当に深呼吸できるのはひとりの時間だけだと、私は思います。以前はそれがダメなことだと思って、少しコンプレックスだったんですよね。もっと人を信じた方がいいんじゃないか、みたいな。

佐藤:
すごくよく分かります。私は冷たい人間なのかなって不安になるときがあります。

土門さん:
昔は、家族は何でも分かり合える存在だとか、親友とは何でも話せるものだという価値観があったから、それができないことで苦しんでいました。もっと人を信じて、素の自分でいられたらいいのにって。でも、できないものはできない。それを責める必要はないし、別に悪いことじゃないなと思います。自分にとってはひとりの時間がやっぱり必要で、その時間をどうより良くしていけるか。自分と自分の関係性をどう良くしていけるか、みたいなことを研究している毎日って感じです。

佐藤:
なるほど。今、私が言語化できなかったモヤモヤを言葉にしていただいたようで、すごく救われた気分です。

土門さん:
人前で素の自分に戻ることって、やっぱり怖いんですよ。「母親」とか「妻」とか、色々な役割がある中で自分をさらけ出そうとすると、どうしても矛盾をはらんでしまう。そういう意味で、矛盾のない世界っていうのはひとりの世界だなと思います。大切なのは、ひとりの世界を持ちながら他人と付き合っていくことなのではないでしょうか。

土門さん:
ひとりの時間=土門蘭ワールドを大切にしながら外に出ていいんだなって思うんです。家族や友人を、その中に入れてあげることができなくてもいい。ひきこもったままちょっとだけ顔出して「元気?」みたいな感じでもいいんだなって。佐藤さんも、佐藤さんワールドを大切にしたら良いのだと思いますよ。

佐藤:
わたしワールドを持ちながら、他者と関わっていく。今、すごく肩の荷が下りたような、ほっとした気持ちになりました。ありがとうございます。

深呼吸は、「自分自身に還る時間」

佐藤:
それでは最後に、土門さんにとって深呼吸とはなんですか?

土門さん:
やっぱり、本来の自分に還る時間なのだと思います。それは同時に怖い瞬間ではあるけれど、それがあってこそ外の世界でも頑張っていける。その心地よいバランスを保ちながら、私も日々暮らしていきたいと思います。

佐藤:
ついつい頑張りすぎて休むことが後回しになるときこそ、本来の自分に還って深呼吸する時間がとても大切なのだなと改めて感じました。土門さん、今日はありがとうございました。

取材後記
ご自身のエピソードを交えながら、深呼吸に対するとても素直な気持ちをお話ししてくださった土門さん。お話を聞きながら、私の中でどんどん大きくなっていったのは「安心感」でした。

そうだよな、日常ってままならないものだよな。
できない自分を責める必要はないのかもしれないな。
人と違っていい。自分なりの深呼吸が見つかれば、それで。

キラリと光る希望と、心の中で手を繋いだような安心感を感じるインタビューは、私にとってまぎれもなく呼吸の深まる時間でした。

みなさんはこの記事を読んでどう思いましたか?もしよろしければ、こちらのフォームからご感想をお寄せください。みなさんの日常に、「は~」っと深呼吸が届きますように。


文章:佐藤ちえみ
撮影:小黒恵太朗
撮影協力:Com-ion

編集部 HAA
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