妻の寝顔
僕は妻の寝顔が怖い。
それは、よだれが垂れているから。
とんでもない寝相だから。
眉間にシワを寄せて寝言をつぶやくから。
ではなくて、無防備な姿が、とても愛くるしくて、平和で、じんわりと幸せを感じるから。
いつかこの人と、この時間とのお別れが、死やなんらかの形で訪れることがとてつもなく怖いと感じる。この毎晩の密かなルーティーンが、僕にどんな影響を与えているかはわからないけれど、以前よりも、ごはんが美味しいし、山や空が美しく見えるし、取り留めのない会話を楽しめるようになった気がする。
僕は妻の寝顔が、とても愛くるしく、とても怖い。