今日から新しい連載が始まります。その名も、「深呼吸を探す旅」、略して深旅(しんたび)。HAA代表の池田が日本全国を巡りながら、日常に溶け込む深呼吸を探ります。
第一回の舞台は、京都・鴨川。いったいどんな深呼吸が見つかったのでしょうか?HAA編集部が聞きました。
鴨川には、暮らしに溶け込む「は~」があるらしい
--今日から新連載「深旅」がはじまりました。KANOKOさんは、これまでも、深呼吸を探してさまざまな地域に赴き、フィールドワークを重ねてきていますよね。
はい、実は昨年から本格的にさまざまな地域を巡り歩いています。
--その様子は、HAAのPodcast番組『深呼吸できる女とできない女』でも発信されていると思いますが、ジャーナルでも、KANOKOさんがどんな視点で深呼吸を探し、どんな風に考えを深めているのか、その軌跡を発信していきたいと思います。
楽しみです、宜しくお願いします!
--早速ですが、今回、京都・鴨川を目的地に選んだのはどうしてですか?
行き先を選ぶ際に、まず身近な人たちに「どこに行ったら私が探している深呼吸があると思う?」と聞いてみたんです。そうしたら、複数の方から「京都の鴨川がいい気がする」というご意見をいただいて、行ってみようと思いました。
--KANOKOさん自身は、これまで鴨川に行ったことはありましたか?
京都には何度も訪れていたし、鴨川沿いを歩いたこともありました。けれど、鴨川にスポットを当てて訪れたことはなかったですね。あと、鴨川は京都のまちを南北に流れていて、エリアによって全然雰囲気が違うんですよね。どのあたりでフィールドワークを行うかも、今回のポイントのひとつでした。
--なるほど。今回は鴨川のどの辺りに行ったのですか?
駅でいうと、京阪電車の出町柳駅から神宮丸太町駅の区間です。このエリアは、観光目的の方というより、日常的に地元の人が訪れることが多いエリアと聞いたので、私が探している「日常の中の深呼吸」と巡り合えるのでは?と思ったんです。
--確かに、「観光」というより「日常寄り」な鴨川の姿が感じられそうですね。具体的にどのようにフィールドワークを?
毎日同じ時間に、同じエリアに行って、みんながどんな風に過ごしているかをまず観察してみました。楽器を演奏している人や、モルックの練習をしている大学生、バトミントンをしているご夫婦や、サッカーをしている小学生。鴨川という場所を皆で共有しながら、それぞれ好きなことを自由にやっている感じがとても印象的でしたね。
--Podcastのエピソード48でも、モルックをしている大学生に声をかけたエピソードをお話ししていましたね。
そうそう。そちらも是非聴いていただきたいのですが、数日間鴨川で時間を過ごしてみて、確かに、「ここには深呼吸があるな」「ここはHAA的な場所だな」と感じました。
鴨川の深呼吸は、別府の共同浴場の深呼吸と似ている
--鴨川にあった深呼吸は、具体的にどんなものだったと思いますか?
まさに私が探していた深呼吸だったなと思います。というのも、私の言う“深呼吸”のひとつの基準になっているのが、HAAのブランドを始めるきっかけになった別府の共同浴場にあるものなんですが、それにすごく似てるな~と感じたんですよね。
--なるほど。
別府の共同浴場は、100円〜300円くらいで手軽に入れる温泉のことで、「地元の温泉=ジモ泉」として親しまれています。街の至る所に点在していて、自宅のお風呂に入るように、毎日入りにくる人も多いんですよ。
裸になって温泉に浸かって「は~」っとする瞬間、自分が抱えているものがお湯に溶けて、自然と心に余白が生まれるんですよね。それが、私が考える深呼吸の基準になっているんですけど、鴨川に行ってみて、別府の共同浴場と同じだ!と、すぐに分かりました。
--へ~、おもしろい!。そのふたつの場所には、なにか共通点があるのでしょうか。
どちらで過ごす時も、素の自分に戻れる感覚がありますね。鴨川で過ごしているときも、別府の温泉に浸かっているときも、仕事の肩書や家庭での役割のような「タグ」のようなものが剝れて、最後に残る「自分自身」で過ごせている気がします。心が裸になる感覚、というのかな。
--なるほど。でも、同じ空間を知らない人と共有しているときって、普通は一定の緊張感がありますよね。それがない、というのが不思議だなと思います。
そう、そうなんです!きっとトリガーがあると思うんですけど、それが何なのか、今はまだうまく言語化できていなくて。それが分かれば、別府や京都に行けなくても、自分の生活圏内で深呼吸する機会をもっと増やせると思うんです。今後もフィールドワークを重ねながら、それを見つけたいと思っています。
時間軸と空間軸でみる「間(あわい)」
--今回のフィールドワークで、何か新たな発見や気づきはありましたか?
深呼吸には、「間(あわい)」が深く関係しているような気がするんです。間というのは、余白や間合いというニュアンスを含む言葉ですが、深呼吸を間という視点で捉えると、「時間的間」と「空間的間」があるなと思っていて。
鴨川や別府の共同浴場に共通するのは、そこに行けば余白を感じられるという、空間的間があると思っています。加えて、その空間への導線が極めて日常に近いことも大切な要素だと考察しています。
--人々の日常生活にうまく溶け込んでいるということでしょうか。
そうです。例えば、一般的には「温泉」は、しっかりと休みたい時に行きますよね。けれど、別府の共同浴場はそれとは違って、日常と温泉が溶け込んでいます。コンビニの数より温泉の数が多いので、自身の日常的な空間の中に温泉が自然と入り込んでいる。別府でいえば温泉のように、そうした深呼吸できる場所が身近にあることで、日々のこころのリズムが整えられているように感じます。
--HAAも、「日常に、深呼吸を届ける」をミッションにしていますよね。この“日常”というのがひとつ、キーワードになりそうです。もうひとつの「時間的間」というのはどういうものですか?
例えば、珈琲をドリップしている時間とか、遠くの山をぼーっと眺めている時間とか。その人がいる場所は変わらないけれど、行為として発生する間や余白のことだと捉えています。
--なるほど。音楽を聴いたり、ペットと触れあったりする時間なども時間的間を感じますよね。
まさにそうですね。つまり、「深呼吸」といっても、色々な要素が絡み合っていることが、フィールドワークを通して分かってきました。それをもっと深掘って、整理して、いつか本にまとめる形で皆さんの元にお届けしたいと思っています。
--すごく興味深いです。この連載では、そんなKANOKOさんがリアルタイムで感じていることを追いかけていきますので、読者の皆さんもその過程を一緒に感じていただけたらうれしいです。
自分の日常にも当てはまるエッセンスとは
--最後に、今回の鴨川で見つけた深呼吸を一言で言うと何だと思いますか?
「そのままの自分でいられる感覚」ですかね。自分についたタグがどんどん取れて、心が裸になっていく。そんな深呼吸体験でした。
--温泉じゃなくても心が裸になれることを体感されたんですね。ということは、やっぱりこの深呼吸は、色んな人の日常に取り入れることもできそうですね。
そうですね。当然誰しもがすぐ鴨川や共同浴場に行けるわけではありません。
でも、例えば自宅から徒歩30分圏内を見渡したときに、公園やカフェなど、自分が素になれる場所があるかもしれません。疲れたときはここにいけば深呼吸できる。そう思える場所があるだけで、すごく心強いと思うんです。
--その人にとっての温泉や鴨川を見つける、ということですね。
まさにそうですね。持論ですが、家のお風呂も空間的間がある場所だと思っています。海外の方って、お風呂を「身体を清潔にする場所」として捉えているんですって。つまり、機能的価値を感じているということですよね。一方で、日本人の方は機能的価値に加えて「ほっとできる場所」「呼吸が深まる場所」としての情緒的価値を感じている人がすごく多いことが分かったんです。
HAAの第一弾プロダクトを入浴剤にした理由は、ここにあります。一番身近で、一番深呼吸しやすい場所は、家のお風呂だと思うので、これから暑い季節ですが、ゆっくりお風呂に浸かる時間で深呼吸してもらえたら嬉しいです。
--ありがとうございます。
深呼吸を探す旅はまだまだ続きます。
次はどの街で、どんな深呼吸が見つかるのでしょうか。次回もお楽しみに。