HAAの取り扱い店さまを巡るインタビュー連載。今回ご紹介するのは、広島県尾道市の向島にある、美しい器や暮らしの道具を取り扱うギャラリー「素白 so_haku__」(以下、素白)です。
お話を伺ったのは、素白を主宰する中尾早希(なかお・さき)さん。実は、HAAのブランドコンセプトづくりをサポートしてくださるなど、HAAと縁深い方でもあります。
そんな早希さんが素白をオープンさせたのは、昨年の夏、満月の日のことでした。
満月の日、瀬戸内の向島にオープン
穏やかな波がよせる瀬戸内の海。
思わず深呼吸したくなるような風景は、人の心を落ち着かせ、訪れる人を魅了してやみません。
瀬戸内に点在する島々の中で、尾道本土側から一番近くに位置する向島。尾道の船乗り場から尾道渡船フェリーに乗り、5分ほどで到着します。海の香りを感じながら歩くこと約10分、小さな看板が目印の建物の2階に、素白はあります。
「素白は、2022年7月14日にオープンしました。作家さんが生み出した美しい器や暮らしの道具を中心に取り扱うギャラリーであり、お茶会やワークショップを催すなど、心豊かに暮らしていくためのものごとを追求するアトリエでもあります」
「満月の日にオープンしたのは、自然と調和することを大切にしたいという想いからです。主な営業日は曜日で決めているんですが、天体の流れや二十四節気などを意識してイベントの日取りを決めるなど、太陰暦(月の満ち欠け)をはじめとした自然のサイクルを、今も変わらず大切にしています」
モノやコトを通して、心豊かな暮らしを探求する素白。この場所が生まれるまでの歩みを紐解きます。
心豊かな暮らしのきっかけが見つかる場所
学生時代、店舗設計や建物の内装デザインを学んでいたという早希さん。当時から、将来は自分のハコがほしいと考えていました。しかし、最初から具体的なイメージができいたわけではなかったのだといいます。
「“どうあるべきか”というコンセプトづくりのようなものを、ひたすらやっていました。自分が実際にできることと、社会にとってどういう存在であるべきかということを、ずっと模索していましたね」
「自分の規模感でできる複合施設をつくって、そこで心豊かに暮らすためのことを研究していく。素白はギャラリーであり、アトリエであり、研究所のような場所。ここで皆さんが感じ取った何かが、それぞれの心豊かな暮らしに活きたらいいなと」
素白ができるまでの歩みを振り返り、時より微笑みながら楽しそうに語る早希さん。紡がれる言葉の節々に、美しさと同時に強く太い芯のようなものを感じました。それは、自分の内面と向き合い、アウトプットすることを続けてきた歳月があってこそ。
自分自身との対話を経て生み出した、素白という場所。ここで扱うモノや関わる人とも、丁寧に対話をすることを大切にしているのだといいます。
「お店をやるなら、私自身が大学生の頃からコツコツ集めてた作家さんのモノたちを扱いたいと思いました。でも、長年使っていてモノの良さは理解していたのですが、作家さんの想いや作る過程については、もう少し深掘りしたいなと思って。それで、作家さんの工房にお邪魔させてもらって、どういう環境で、どういう想いで作ってるのかをじっくりお聞きしていきました」
「そうしたら、やっぱり、私が使って体感したことと、作り手の想いって結構一致してるなってひしひしと感じて。ひとつひとつに嘘がない事とか、美しいものには美しい考え方がちゃんと根付いてることを、再確認できたんです」
大切なことを五感で感じられる場所づくり
モノと人との対話を通して、誠実であること、嘘がないことの強さを実感した経験は、素白の場づくりのあらゆる面でも活かされています。
「この空間をつくったり、モノを選んだりするときに、さまざまな観点から大切にしたいことを考えました。例えば環境的な観点からは、 壁の素材を科学的な塗料ではなく、漆喰などの呼吸をする素材を使ったりとか。経済的な観点としては、例えば100均でもコップは買えるけれど、その何倍も高い作家もののマグカップを買える人を増やせるかどうか。真摯にものづくりをする人も健やかに暮らすためには、そういうところにお金を使える人が必要です。伝統産業の存続とか地方創生というと大袈裟すぎる表現になりますが、地域に残るいいものを未来に繋いでいくためにも、ちゃんと魅力を見出して伝える存在は必要です」
本当に色んな観点からみて、『世の中にいい循環が生まれたらいいな』と思っているんです。みんなが気づけるきっかけの場所として、素白が活きたらいいなと思っています」
「ここで行われるイベントやワークショップも、ちゃんとその人が気持ち良く過ごせるための第一歩になることや、滞りのない心身の状態になるための潤滑的な役割になったらいいなという想いが根本にありますね。お金や経営が大切なのは分かるけど、“儲かるからやる”というような考え方を一番上に置くのは違うなと思っています」
この場所に来ることで、語らずとも伝えられるものが沢山ある。それがハコをつくって良かったと思う瞬間だと、早希さんは言います。
素白を訪れた方が心地よさを感じ、また来たいと思う。その由縁は、嘘がなく誠実な早希さんの姿勢が、空間全体から伝わるからなのかもしれません。
早希さんにとってのHAA時間は?
心豊かな暮らしについて、実生活でも素白でも向き合っている早希さん。インタビューの最後に、日常の中では~っと深呼吸できるような「HAA時間」について伺いました。
「お茶を飲む時間です。お茶は、ちょっとお湯を沸かして2、3分たてば飲めて、手軽ですよね。更に言うと、それを身体の中に取り入れてゆっくり過ごす時間がとても落ち着くので、お茶の時はスマホも見ないで、本を読む手も止めます。5分10分でもいいから、お茶を飲んでほっとする。これは、長い間大事にしている日々の習慣です」
「grrrden(ガーデン)という屋号で、植物療法と占星術を組み合わせながらカウンセリングをしてくれる女の子がいるんです。素白でもワークショップをしてくれていて、自分のために今飲むと良いブレンドハーブティーを作ってくれるんです。その彼女から快眠ブレンドというハーブティーをもらって、寝る1~2時間前に飲んでいます。そこからはスマホを見ないとルールを決めて、寝るためのセレモニーのような感じで。そうしたら、睡眠の質がびっくりするぐらい上がったんですよね。そうやって、オンオフの時間を切り分けてあげるなど、自分でちゃんとしてあげるのって、とても大事だなと思うんです」
確かに、ながら作業のようにお茶を飲むのと、他のものを絶ってお茶を飲むことに向き合うのでは、その感じ方や得るものも大きく変わってきそうです。
しかし、頭で分かっていても、忙しい日々の中でそうした時間は忘れがちな方も多いのではないでしょうか。だからこそ、ワークショップに参加したり、足を運んで何かを感じ取ることで、自分を見つめる時間を作ることが大切なのかもしれません。
忙しい日々の中でも、心豊かに暮らしたい。
そのきっかけになるのは、1枚の器かもしれないし、交わした言葉なのかもしれないし、心から好きだと思う空間に足を運ぶ時間そのものなのかもしれません。
素白に行けば、そうした何かに出会えるのではないか。
そんなワクワク感と共に、今の暮らしを見つめたくなったインタビューでした。
(写真提供:素白)
【素白 so_haku__】
所在地:尾道市向東町1011-1 2階
アクセス:尾道渡船(兼良渡し)で向島に渡り、徒歩10分(専用駐車場2台あり)
営業日:月により変動あり。instagramよりご確認ください
https://www.instagram.com/so_haku__
素白で取り扱っているHAAのアイテムはこちら
https://haajapan.com/products/haa-for-bath-kobako?so_haku__
次回は、HAA代表の池田×素白の中尾早希さんによる対談の様子をお届けします。HAAのコンセプトが生まれた温泉合宿のお話や、ブランドづくりの過程を深掘りしましたので、是非お楽しみに。