“まる”を数えたい
3歳の娘にはお気に入りの傘がある。
花柄もピンクも大好きな娘は、その傘を宝物のように大事にしている。雨の日は必ず持ち出そうとするくらい気に入っていて、だから雨が降るだけで喜んでいる。
天気予報で"雨"と聞くとげんなりする。
まず外を歩くだけで衣類がぬれて身体に張り付く。靴も当然ぬれる。朝から全身ぐしょぐしょになった日には、「これで一日過ごすのか...」と気持ちが一気にマイナスになる。
しかも湿度が高くなる。電車のような密閉空間での不快感はもちろん、洗濯物が乾きにくくなる。部屋干しは場所を取るし、生乾きになることを考えるだけでもう勘弁だ。
そのうえ自転車には乗れない。自転車が通勤などで使えないと、普段よりも時間をかけて歩かないといけない。これだけで1日分の気力がなくなってしまう。
私の場合は特に、保育園の往復が憂鬱になる。晴れていれば自転車を使うのだけれど、雨の日は娘が傘をさしたがるので徒歩で登園している。娘は家を出て数歩で「だっこしてー」と言うので、私が抱っこしながら傘をさしながら歩いている。娘は両腕を使ってやっと抱っこできるくらいの体重なので、傘を使いながら登園を終えるとへろへろになってしまう。
雨が待ち遠しくなったきっかけは保育園に向かう道でのこと。
「見て見て、まるがあるよ」
ある日ふと思い立ち、水たまりを指してみた。雨が降って水たまりにできる輪の模様が、丸い形になっている。そのときはじっと見ているだけだった。
まるが好きな娘には琴線にふれるものがあったらしい。それから、自分で"まる"を見つけては「あ、まる!」と言いながらにこにこで教えてくれるようになった。私もついうれしくなって、「あ、ほんとだ!」「よく見つけたね!」などと言ってしまう。そしてちょっと口角が上がる。
雨の日はちょっと憂鬱だ。
でも今は、娘と雨の日にしかできない会話があって、それがちょっと楽しみである。